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最高裁判所第一小法廷 昭和54年(オ)858号 判決 1979年12月20日

上告人

網掛泰久

上告人

綱掛和之

右両名補助参加人

網掛ヤエ子

右三名訴訟代理人

町井洋一

被上告人

更生会社不二ハウス株式会社

管財人

石川準吉

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理由

上告代理人兼上告補助参加人代理人町井洋一の上告理由第一点について

原判決の事実摘示として証拠関係の記載を全く欠いていることは所論のとおりであるが、本件記録及び原判決の説示に徴すると、それが判決に影響を及ぼしているとは認められないから、所論は適法な上告理由に当たらない。論旨は、採用することができない。

同第二点の一について

本件土地の売買残代金を一五万円に減額する約定が成立した日について、上告人らが昭和四七年九月二七日であると主張したにもかかわらず、原判決の事実欄には上告人らが昭和四一年一〇月二九日であると主張した旨の記載がされているが、原審は、証拠に基づいて右約定が成立した日は昭和四六年一二月二八日であると認定しているのであるから、右記載の相違は判決に影響を及ぼすものではなく、所論は適法な上告理由に当たらない。論旨は、採用することができない。

同第二点の二、三について

所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するものにすぎず、採用することができない。

同第三点について

原審が適法に確定した事実関係のもとにおいて、本件残代金の支払の催告が有効であり、本件売買契約の解除が信義則に反するものではなく、権利の濫用にも当たらないとした原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(戸田弘 団藤重光 藤崎萬里 本山亨 中村治朗)

上告代理人兼上告補助参加人代理人町井洋一の上告理由

第一点 原判決は、証拠摘示を欠き、民事訴訟法第一九一条一項に違反して判決に影響を及ぼすこと明らかな法令違背(同法第三九四条)あるのみならず、ひいて理由不備(同法第三九五条一項六号)の違法がある。

一、第一審において法廷に顕出された証拠方法は訴訟記録によれば次のとおりである。

原告(被上告人)

(1) 甲第一ないし第三号証、第四号証の一、二、第五号証の一、二、第六ないし第八号証、第九号証の一ないし三、第一〇号証の一ないし三、第一一ないし第一七号証

(2) 証人 網掛ヤエ子、同泉田一郎、同松島盛大

被告(上告人)

(1) 乙第一ないし第三号証、第四号証の一、二

(2) 証人 網掛ヤエ子

二、原審においては、さらに控訴人(上告人)から次の証拠方法が法廷に顕出されたことが訴訟記録上明らかである。

控訴人(上告人)

(1) 乙第五号証、第六号証の一、二、第七、第八号証、第九号証の一ないし一一、第一〇号証、第一一号証の一ないし四、第一二号証の一、二、第一三号証の一、二、第一四号証の一、二、第一五号証の一、二、第一六、第一七号証

(2) 証人 岩佐泰治、同網掛ヤエ子

三、しかるに、原判決は、事実摘示に以上の証拠関係の記載を全く欠いている。(訴訟記録中の証拠目録等の引用も一切ない。)

(理由中においても、触れてあるのは、甲第二号証、第四、第五、第九号証の各一、第一二号証ならびに各証人の証言のみ。)

四、法廷に顕出された証拠関係の記載を民事訴訟法第一九一条一項二号の「事実及び争点」に含むと解することは、近代司法の基本原則たる証拠裁判主義に則り、通説であり、確定した判例(大審大正九年(オ)二三六号・同一〇年四月二五日判決・民録二七輯七七〇頁、大審昭和二年(オ)第七九四号・同年一二月二一日判決、評論一七巻民訴三二一頁、大審昭和一四年(オ)一七二七号・同一五年六月一五日判決・法学一〇巻八六頁)でもある。(事実摘示に含ませてないときは、理由中での指摘が最少限必要である。)

五、よつて、原判決はこの点において、違法、破棄を免れざるものである。

(近時における一部論者による判決(書)の合理、簡易化の一環としての証拠指示不要論には、立法論も含めてなお検討工夫すべきものを含むとするも法解釈上にわかに首肯すべからざるものと信ずる。)

第二点〜第三点<省略>

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